特集コーナー Vol.3
懐石・宿 近又の食育授業
懐石・宿 近又と京都市立新町小学校では新しい食育の取り組みをはじめている。
老舗料理旅館ならではの内容で、児童たちも熱心に授業に取り組み、食についての知識を深めているという。京都が誇る名店 近又の歴史



懐石・宿 近又は京の街のなかでも最もにぎやかな四条通と錦小路通に挟まれた一角にひっそりとたたずむ懐石・宿 近又。
創業は、江戸時代の享和元年(1801)。
屋号にもなっている「初代・近江屋又八」により、近江の薬商人の定宿として栄えていった。
当時は今の場所から2分と離れていない麩屋町にあり、明治31年現在の地に移った。
河原町などに近い市街の喧噪のすぐそばにありながら、京の伝統的な町家造りを今に残している。
創業は、江戸時代の享和元年(1801)。
屋号にもなっている「初代・近江屋又八」により、近江の薬商人の定宿として栄えていった。
当時は今の場所から2分と離れていない麩屋町にあり、明治31年現在の地に移った。
河原町などに近い市街の喧噪のすぐそばにありながら、京の伝統的な町家造りを今に残している。
近又の食育 そのきっかけは…
この教室を始めるきっかけはやはり、現代の食生活の乱れにあるという。
近又の主人、七代目又八で総料理長の鵜飼治二さんはこう分析する。
近又の主人、七代目又八で総料理長の鵜飼治二さんはこう分析する。

食の乱れ問題は子供に原因があるのではなく、子供に躾をしなくてはいけない両親(30歳代)がどういう生活を送ってきたかが非常に大きな影響を与えるのだという。
高度成長期(1940年代)の60歳代を第一世代として考えると、現在の小中学生は第3世代。
世代を超えた今、その影響が顕著に露呈しているのだと言う。
では、その経過を見ていこう。
高度成長期(1940年代)の60歳代を第一世代として考えると、現在の小中学生は第3世代。
世代を超えた今、その影響が顕著に露呈しているのだと言う。
では、その経過を見ていこう。
第1世代(1940年代生まれ)
幼少のころは食べることに苦労したが、大人になるころには、高度経済成長の影響で、生活は豊かになった。
しかし、仕事が忙しくなり、家族が揃って食事をする機会が極端に少なくなった。
(子供への躾)
子供には、自分たちのように食べることに苦労させたくないと、食べたいものを好きなだけ与えた。また、好き嫌いも容認してきた。
子どもと一緒に食事をする機会が少なく、食事作法、マナー、食べ物の大切さを教えることができなかった。
幼少のころは食べることに苦労したが、大人になるころには、高度経済成長の影響で、生活は豊かになった。
しかし、仕事が忙しくなり、家族が揃って食事をする機会が極端に少なくなった。
(子供への躾)
子供には、自分たちのように食べることに苦労させたくないと、食べたいものを好きなだけ与えた。また、好き嫌いも容認してきた。
子どもと一緒に食事をする機会が少なく、食事作法、マナー、食べ物の大切さを教えることができなかった。
↓
第2世代(1960〜1970年代生まれ)
食べ物に苦労したことはない。 子供の数が減り、ますます個食が進む。
(子供への躾)
親からは好きなものを好きなだけ与えられてきたため、好き嫌いが多い。
なので子供に「好き嫌いをなくしなさい」とは言えない。
食事作法、マナー、食べ物の大切さを知らないので、子供にも教えられない。
食べ物に苦労したことはない。 子供の数が減り、ますます個食が進む。
(子供への躾)
親からは好きなものを好きなだけ与えられてきたため、好き嫌いが多い。
なので子供に「好き嫌いをなくしなさい」とは言えない。
食事作法、マナー、食べ物の大切さを知らないので、子供にも教えられない。
↓
第3世代(1990年代生まれ)
現在の小中学生がこの世代。
好き嫌いがあるのは当たり前で、好物はファーストフードやカップラーメン。
食事のマナーや作法を全く知らない。
現在の小中学生がこの世代。
好き嫌いがあるのは当たり前で、好物はファーストフードやカップラーメン。
食事のマナーや作法を全く知らない。
このような図式で、現在は食生活が著しく乱れているという。
これを見て、どう感じるでしょうか。
好き嫌いは、病気などすれば、健康のために改善しようと思うかもしれない。
しかし、マナーや作法はどうだろうか。
これは、文化ですから形などない。途絶えればそれで終わりだ。
この悪い連鎖を何とか食い止めたい。
そのためには、第3世代である小学生に何らかの対策をしないといけない。
そこで近又と京都市立新町小学校が共同で、授業を始めた。
毎回、近又の主人・鵜飼氏が講師となり、食事の大切さ、食事の際のマナーや作法を教えている。
また、長年培った職人技を披露することで、職業に対する興味・関心も持ってほしいとの思いも込められている。
これを見て、どう感じるでしょうか。
好き嫌いは、病気などすれば、健康のために改善しようと思うかもしれない。
しかし、マナーや作法はどうだろうか。
これは、文化ですから形などない。途絶えればそれで終わりだ。
この悪い連鎖を何とか食い止めたい。
そのためには、第3世代である小学生に何らかの対策をしないといけない。
そこで近又と京都市立新町小学校が共同で、授業を始めた。
毎回、近又の主人・鵜飼氏が講師となり、食事の大切さ、食事の際のマナーや作法を教えている。
また、長年培った職人技を披露することで、職業に対する興味・関心も持ってほしいとの思いも込められている。
斬新な食育授業に密着
では、実際にどのような授業が行われているのか見ていこう。
9月25日には、京都市立新町小学校の6年生約45名が近又での授業に参加した。
最初に行われる近又の主人・鵜飼氏による講義形式の授業では、日本人として忘れてはならない衣食住についてのお話を聞く。 「衣」は着物。これほど美しい服装は世界のどこを探してもない。 「食」は日本食。調理のプロの立場から日本食に関心を持ってもらいたい。 「住」は日本建築の基本でもある書院造りをぜひ体験してもらいたい。 着物を着こなした女将が子供たちを迎え、日本食のプロがその技や食べることの大切さを伝え、書院造りのお部屋で料理を食べてもらう。 ありきたりな食育ではなく、日本文化を総合的に勉強できるのが近又なのだ。
9月25日には、京都市立新町小学校の6年生約45名が近又での授業に参加した。
最初に行われる近又の主人・鵜飼氏による講義形式の授業では、日本人として忘れてはならない衣食住についてのお話を聞く。 「衣」は着物。これほど美しい服装は世界のどこを探してもない。 「食」は日本食。調理のプロの立場から日本食に関心を持ってもらいたい。 「住」は日本建築の基本でもある書院造りをぜひ体験してもらいたい。 着物を着こなした女将が子供たちを迎え、日本食のプロがその技や食べることの大切さを伝え、書院造りのお部屋で料理を食べてもらう。 ありきたりな食育ではなく、日本文化を総合的に勉強できるのが近又なのだ。


職人技を実演
講義が終わると、鵜飼氏による料理の実演に入る。
大根の桂剥き、人参の飾り切りなどを見せることで、職人技がどういうものなのかを教えるのだ。
鮮やかな手さばきに歓声を上げたり、ただただ見とれる児童たち。
これを見て、1つ1つ細かいことを積み重ねることの大切さや、職業観を学ぶのだ。
大根の桂剥き、人参の飾り切りなどを見せることで、職人技がどういうものなのかを教えるのだ。
鮮やかな手さばきに歓声を上げたり、ただただ見とれる児童たち。
これを見て、1つ1つ細かいことを積み重ねることの大切さや、職業観を学ぶのだ。



生命をいただくことに感謝を忘れてはならない
近又の授業の中で最も興味深いのが、生きた素材を使い、料理に仕上げるところまでを見せるところだ。
活きの車エビを〆て寿司に仕上げる。稚鮎も同様に串を打ち、塩焼きに仕上げる。
こうすることで、生命をいただいていることを認識させるのだという。
生き物を〆る瞬間は目をそむけてしまう児童もいるが、これが私たちの生きる糧なのだと教えることは非常に重要だという。
活きの車エビを〆て寿司に仕上げる。稚鮎も同様に串を打ち、塩焼きに仕上げる。
こうすることで、生命をいただいていることを認識させるのだという。
生き物を〆る瞬間は目をそむけてしまう児童もいるが、これが私たちの生きる糧なのだと教えることは非常に重要だという。


調理にはすべて意味がある
続いての実演は茄子の炊き合わせ。
茄子に細かく化粧包丁を入れるところを見せる。
これは、だしを吸いやすく、また食べたときに柔らかい口当たりになるようにとの配慮。
皮を下にして炊くのは発色を良くするための工夫。
調理にはすべて意味があることを教えるのだ。
また、料理には細かい工程があることを伝えることで、漁師や農家、家畜業の方々、そして、手間を惜しまずに料理を作ってくれた母親や板前さんに感謝してほしいと鵜飼氏は言う。
茄子に細かく化粧包丁を入れるところを見せる。
これは、だしを吸いやすく、また食べたときに柔らかい口当たりになるようにとの配慮。
皮を下にして炊くのは発色を良くするための工夫。
調理にはすべて意味があることを教えるのだ。
また、料理には細かい工程があることを伝えることで、漁師や農家、家畜業の方々、そして、手間を惜しまずに料理を作ってくれた母親や板前さんに感謝してほしいと鵜飼氏は言う。



京都の町家を体験 部屋のつくりや掛け軸の意味を知る
ここからは、場所を移動し、客室へ案内する。
ここで教えるのは「もてなしの心」。
来てくれたお客さんにお部屋で季節を感じてもらえるように、掛け軸を替えたり、花を生けたりするのだ。
また、食器選びや食材選びももてなしの心だと教える。
ここで教えるのは「もてなしの心」。
来てくれたお客さんにお部屋で季節を感じてもらえるように、掛け軸を替えたり、花を生けたりするのだ。
また、食器選びや食材選びももてなしの心だと教える。


最後のお楽しみ 老舗の味をいただく
おそらくこれが一番のたのしみ。近又の料理がいただける。
しかし、これも授業の一環。
ここで教わるのは表現の仕方なのだ。
おいしいものをいただくときは、程よく会話をしながら、楽しくいただく。
笑顔や言葉でおいしいことを表現することが非常に重要なのだ。
豪華な食事を前に緊張している児童には、「そんなに固くならんでもええよ」とやさしく声をかける鵜飼氏。
しかし、これも授業の一環。
ここで教わるのは表現の仕方なのだ。
おいしいものをいただくときは、程よく会話をしながら、楽しくいただく。
笑顔や言葉でおいしいことを表現することが非常に重要なのだ。
豪華な食事を前に緊張している児童には、「そんなに固くならんでもええよ」とやさしく声をかける鵜飼氏。


今回授業を受けた京都市立新町小学校の児童は実に礼儀正しい。
授業中は私語もほとんどないし、挨拶もしっかりとする。
これは、総合的な食育の成果なのかもしれない。
新町小学校では総合学習の一貫として、食育に非常に力を入れている。
近又での授業のほかにも、京都府立大学から講師をまねいてテーブルコーディネートやマナーを学んでいる。
また、京都市内の農園では作物も育てている。
食を正しく理解することで、礼儀や作法まで身に付けらるとしたら、他の小学校もすぐに取り入れるべきだと感じた。
授業中は私語もほとんどないし、挨拶もしっかりとする。
これは、総合的な食育の成果なのかもしれない。
新町小学校では総合学習の一貫として、食育に非常に力を入れている。
近又での授業のほかにも、京都府立大学から講師をまねいてテーブルコーディネートやマナーを学んでいる。
また、京都市内の農園では作物も育てている。
食を正しく理解することで、礼儀や作法まで身に付けらるとしたら、他の小学校もすぐに取り入れるべきだと感じた。
